イランがイスラエルへの無人機とミサイルによる攻撃を始める前日、教皇フランシスコはサウジアラビアのアルアラビヤ放送の視聴者にメッセージを送り、中東全域での平和を願っていた。
「私たちを包み込み、天上から抱き締めてくださるいのちの光は、憎しみの暗夜を乗り越えるよう求めています。それは、創造主のみ旨に従って、星たちを私たちの世界の上で明るく輝かせるためで、ミサイルの光が空を照らし、その炎が雨となって降り注ぎ、地上を焼き尽くすことがないためです」と4月12日夜に公表された教皇のメッセージは訴えている。
翌日の夜、イランは多数の無人機と弾道ミサイルをイスラエルに向けて発射した。そのほとんどは迎撃された。イスラエルのメディアによると、深刻な被害は、7歳の少女が砲弾の破片を頭に受けて病院に搬送された事例だけだったという。
教皇フランシスコは中東地域の人々に向けて、子どもたちのことを思うよう促す。
「私たちは皆、子どもたちの目で将来を見ましょう」と教皇は呼びかける。「子どもたちは誰が滅ぼすべき敵なのかなどと聞いたりしません。一緒に遊べるお友達は誰なのと聞くのです。子どもたちに必要なのは家と公園と学校で、お墓や集団墓地ではありません」
教皇フランシスコはこう続ける。イスラムのラマダン(断食月)明けの祭り「イード・アル・フィトル」と復活祭の祝いが信者たちに求めているのは、「私たちのまなざしを天に向けて、『あわれみ深い全能の神』である主を礼拝すること」で、そうした姿勢は、「祝福された中東の地で今、流されている血を思う私たちの悲しみとは全くの対極を成すものです」。
「神は平和で、平和を望んでおられます」と教皇は強調する。
軍拡競争があおる戦火を消し止める
神を信じる者は戦争に反対しなければならない。戦争は問題を解決せず、敵対を強めるだけだからだ、と教皇は訴える。「戦争では将来への展望は開けず、あらゆる希望がついえてしまいます」
平和は可能だが、そのためには、人々は憎しみと偏見を捨て去り、他者の信条を尊重して、その存在する権利と安心して暮らす権利を認めなければならない。そして、そこにはイスラエルとパレスチナが共に独自の国家を持つ権利も含まれている、と教皇は指摘する。
教皇フランシスコは改めて訴える。「(パレスチナ・)ガザでの即時停戦。現地では人道危機が起こっています。ひどく苦しんでいるパレスチナの人々に人道支援が届きますように。そして10月に人質とされた人々の解放を求めます」
教皇はさらに、シリアとレバノン、中東全域についての憂慮を表明する。
「怨恨(えんこん)の炎が広がらないようにしましょう。それは軍拡競争という悪意に満ちた風にあおられています」と教皇は続ける。「私たちは戦争が広がらないようにしましょう。悪の慣性を止めましょう」
4月14日、昼の祈りでの教皇フランシスコ。
ここでも中東での暴力の激化を抑制し回避するよう各国に訴えた(CNS)
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